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Nostalgic Future セルフ・ライナーノーツ

2018.5.20.に黒川翔太として2枚目のCDをリリースしました。

前作「PRISM」については時間が経ってしまい詳しく思いだすのが難しそうなのでまず直近の作品「Nostalgic Future」について忘れないうちに記録しておこうかと思います。

まず今回のアルバムは黒川翔太という名義で出しましたが、ここ一年とちょっと同じメンバーで活動して来た中で生まれて来た曲やアレンジなので、純粋なソロ作品とは少し自分の中では違う印象を持っています。いつもサポートしてくれているE.guitar白石尚悟(ShogoShiraishi & The SystemTheory)以下、白石くん、Flute木下真美子(以下、まみたん)、Piano佐藤だいすけ(Yonetake)以下、だいちゃん、Bass山本玲子(以下、玲子)、Drums堀河龍樹(以下、たっつん)、それぞれの持っているテイストも出してもらって、フォークな弾き語りをやっているシンガーソングライターや、逆に元々バンドとして活動をしている人たちには出せない、そのどちらでもなく、またどちらでもあるような面白さのある作品になったんじゃないかと思っています。そしてそういう方向を模索して進んでいけたらな~とぼんやりとだけど確信を持っています(変な言葉)。ま、次がどうなるかなんて全然わからないし、今の所反動でめちゃPOPなものが作りたい気持ちでいっぱいです。

MixMasteringは前作と同じでoz design代表、大園隆司氏、ジャケットのデザインはシンガーソングライター、アニメーターとして活動している鶴堀貴之氏(a.k.a. turu , Voli)にお願いしました。

 

Track1 ブラック

高田馬場四谷天窓というライブハウスで、出演者全員ブラックというタイトルで曲を作って発表するという企画に出演した時に作った曲。2016.9.30.発表。確かその日がだいちゃんと初めて二人でライブをする日だったので、最初はPianoとのデュオをイメージして書いたと思います。イントロ、間奏、エンディングに出てくる繰り返しをギターとピアノでハモったら綺麗かもな、と。アコースティックギターとピアノの組み合わせはよくあるんだけど、実はあまり相性は良くないんじゃないかと思っていたので、色々考えどちらかというとピアノが綺麗に映えるように意識して覚えがあります。

LINEのやりとりを見返してみたら9/29にだいちゃんから「新曲出来ましたか?」って入ってたのでもしかしたら前日に出来たのかもしれないすみません。企画の為とピアノとのデュオ用に書いた曲ですがその後も一人でもバンドでも演奏し続けているお気に入りの曲です。

今回のメンバーでのアレンジはまみたんのフルートとだいちゃんのピアノの美しい曲ですが、バッキングに徹してくれたエレキギターも良いです。2回目のサビの後ろで鳴らした歪んだギターも(このギターは大園氏の案)。この曲のレコーディングは全パートあまり苦労しなかった覚えがあります、ボーカルも一回しか歌ってません。個人的には2番サビのGdim→A#m7♭5→Fm7♭5の流れが好きです。

 

Track2 始発 ~夜明け前~

まだ暗い時間に最寄りの駅の踏切に行っていそいそと録音しました。このアルバム「Nostalgic Future」はTr.1のブラックが夜月と太陽で夜が明けて昼、夕、夜、また朝というイメージだったので始発の電車の音にしました、月と太陽の歌詞にも出てくるし。特に寒い時期でもなかったのでそこはよかったけどフィールドレコーディングは天候に左右されるので苦労しました。雨だったり風が強かったり。あと交番の目の前で録ってたのですが「お、良い音録れそう」って時に限って話しかけられたりしました。(あなたは悪くない)

大体の曲を作っている時、演奏している時に僕は割とハッキリと景色を見ているのですが曲中に環境音を入れる、混ぜ込むという事はまだ抵抗があって(というかそのスキルがまだ無い)前回のアルバム「PRISM」同様トラック一つ使ってより”Nostalgic Futureの世界”に入ってもらうために環境音を入れました。

 

Track3 月と太陽

Tr.1のブラックより前に全く同じ企画で作った曲。2016.3.7.発表。

この時は白石くんとのデュオでした。イントロのバッキングが出来てからは早かったと思うんだけど、これもLINE見返してみたら3/3の時点で出来てないね毎度すみません。まぁこのエピソードだけで黒川をサポートしてくれている人達が優秀かつ人格者だという事がわかりますね。いつもありがとうございます。

元がエレキギターとのデュオをイメージして作ったのでエレキギターのリフがモチーフ。リズム的にはハネた6/8拍子なのでとても難しく、ドラム&ベース録りでは一番苦労したかもしれません。しかし玲子とたっつんの二人のフィルや独特の揺らぎが出て味のあるリズムになったと思います。鍵盤はだいちゃんにオルガンを弾いてもらいました、僕もだいちゃんもオルガンに馴染みは無かったのであまり良い指示は出せなかったのですが、とても良いフレーズを弾いてくれました。音域的にフルートの居場所がなかなか難しい曲でしたが、今回のレコーディングでは"だからフルートを外す"という選択肢は無かった為、半ば無理やり入ってもらいました笑 この曲でのお気に入りはまずリフ(あとGdimの入れ方)、そしてギターソロ(そういえばソロもレコーディングは苦労しました)、そのソロでのフルートの絡み、最後のサビ前のドラムフィル、最後のサビ終わりの「離れてく」の後のフルートの三連フレーズ、アウトロのベースオルガンエレキギターフルートの流れ、アウトロ終わりのrit.っぽいドラムのクレッシェンド、沢山ありますね。

歌詞的には"""太陽"という言葉を入れずに表現したところとか気に入ってます。夜更け過ぎから夜明けまでをイメージして作った曲。

 

Track4 Beautiful Thursday

大体の曲がそうですが、イントロのバッキングから出来ました。

何故木曜なのかもしかしたら気になっている方もいるかもしれませんがただの直感です。日本語にした時の字面的に木曜日が一番好きというのが関係しているかも。イメージは歌詞にも出てきますがショーウィンドウのある並木通り表参道とかそんな感じかな。

イントロの雰囲気が好きで、それに対してAメロ(ポップスだとセクションごとにAメロBメロサビと呼んだりします)がちょっと単調で弱すぎるかなと思いつつ、サビ的なところの流れがやたらとうまくいったので出来た時かなり嬉しかったのを覚えています(キーがD♭でサビ頭のルートがB)。ドラムはイメージにかなり忠実にやってもらいました。これが結構難しくて、demoを自分で録るのにかなり苦労しました笑 ベースはベースで聞いた感じは普通でわからないと思いますがユニークなパターンだと思います、確か白石くんが提案してくれた気がする。白石くんにはバッキングに終始してもらって最後の最後で出しゃばってもらう笑 まみたんのフルートソロ最高です。だいちゃんはこの曲ではエレピを弾いてもらって、この曲の雰囲気を拡張してもらってます。レコーディングでは意外とエレピのちょっとしたニュアンスで苦労しました。あと、コーラス。玲子がコーラスライン作ってくれてライブではやってくれてるんですがかなり難しく、苦労しました。

歌詞が、というよりBeautiful Thursdayというタイトル含めた雰囲気がすごく気に入ってます。

 

Track5 えんとつ

@homesickというイベントを定期的にやっていた時、タイトルをお題として青山祐己からもらって書いた曲。ご多分にもれずイントロのギターフレーズから出来た曲。そのフレーズに歌詞を乗せて、もう1セクション作っただけの簡単な作りで流れはイントロ→Aメロイントロ→Aメロ→Bメロ→Aメロイントロ(アウトロ)っていう笑 コード進行だけでいうとイントロとAメロは全く同じなのでそれとBメロの2種類の進行パターンしか無い本当に単純な作りなのですがピアノがとても綺麗な絡み方をしてくれて、そしてBメロの演奏が皆とても良いのでそんな簡単な曲には聞こえないですよね笑 Bメロというかサビ的なところは少し凝っていて歌詞的には視点がググッと上空に移動するイメージなのですが、景色をうまく変えられたかなと思っています。歌詞もただただシンプルで、歌詞カードに改めて載せた時に短さにびっくりしました。だけどミュージシャンには意外と一番好評です、詰め込んでないのがいいのかもしれない、良い曲書こうとすると得てして”全部のせ”にしたくなるから笑

曲の作り、雰囲気、歌詞もお気に入りだけどこの音源でいうと特に最後のAメロの「背の高い」って歌う直前のピアノとフルートの8分のハモりとても綺麗です。アウトロのギターソロも好きです。あと個人的にはBメロ後半のD7→F#m7♭5が好き。

 

 Track6 ハルカ

この曲は新しくなくて2014年頃にはありました、過去に違うメンバーで録音をした事もある曲で開放弦を鳴らすイントロから出来た曲です。前回のレコーディングがあったのでアレンジに関してはそこまで苦労しませんでしたし、レコーディングもそこまで苦労はしませんでした。その分現在のメンバーの音にどうやったらなるのかなと色々考えました。白石くんのかっこいいギターソロは一発OKでした。静かになるサビの3小節目のピアノのテンションがとても良いです。荒野をイメージして作った覚えがあります。2番Bメロの雰囲気が個人的に一番好きだったりして。

 

Track7 repeat

この曲も実は新曲ではなく昔からある曲、多分2011年頃かな。JPOPを聞いて育った私は意識をいないと"A→B→サビ" "1番があって2番があってCメロあって大サビ" っていうテンプレから逃れられ無かったというか、勝手にそうなるというか、まぁそういう時期があったんですが、それに(ちょっと)抗って出来たのが”1番だけで完結”のrepeatという曲です。今でこそ"さよならのメロディ"や”Beautiful Thursday”、”えんとつ”といった曲も作れるようになりましたがこの頃はこれだけでも冒険で笑 そういった意味でも今回のアルバムに入れる曲達の先駆けになった曲です。

コード進行はBメロとサビ以外は延々とリピートですが歌詞は無常を歌っています。「陽はまた登り繰り返していく」んだけど同じ瞬間は2度と来ないっていう事を表現しようとしてたんじゃないかなと思います。

プリプロにあまり時間を割けなかったので、レコーディング本ちゃんであれこれ考えながら録っていきました。エンディングのイメージはあったのでそれに添うように。録りはピアノがガイドでベースとドラムから。玲子のベースのフレーズ良いですよね。ドラムはいたってシンプルですがエンディングの長いクレッシェンドはかなり難しいと思いつつその場で指示して演奏してもらいました。さすがたっつん、2回くらいでOKテイク出してくれた気がします。ピアノはガイドのつもりだったけどそれがよかったのでそのまま採用。意外とエレキギターが苦労しました、単調なだけにニュアンスが難しそうでした。フルートもエンディングはその場で作っていきました。用意がなかった為、音がぶつかっていますがそれもまぁ悪くない。同じ音色が同時に出てくるアレンジはこの曲のみで、エンディングではフルート三本、ピアノは二本。今回はこの6人でライブでやっている事をCDに込めるというのが一つの目的だったのであまり入れませんでしたがCDならではのこういう"遊び"はまた次回作れるとしたらふんだんに入れていきたいなと思います。個人的にBメロに行く時のA7/G→D△7の流れ、AキーでのBm→onA→G△7の流れが好き。

 

Mix,Mastering

前作に引き続きエンジニアはoz design代表の大園隆司氏、白石くん同様学生時代の同級生です。前作、今作両方聴いてくれている方は感じていると思いますが曲の方向性が全然違う事に輪を掛けて音自体が全然違います。それはプレイヤーも違えば、演奏力、アレンジの能力も上がっているとは思いつつ大園氏の今回の楽曲に対する理解とアプローチの(前作との)違いも多分に影響していると思います。一つ一つの音ははっきりさせつつ空間が残されたMixだなと感じてます。前作PRISMは購入してくれた方々から「車でよく聴いてるよ」といってもらえるアルバムでしたが、今回のアルバムは車で聴いていたら眠くなってしまって危ないでしょう笑 個人的には部屋で一人の時に聴くようなアルバムになったなと思っています。ライナーノーツを読みながらヘッドフォンで少し大きめの音で隅々まで感じてもらえたら嬉しいです。

 

Jacket Design

前回同様、僕が尊敬するシンガーソングライターでもあり、アニメーターでもある鶴堀貴之氏 a.k.a. turu,Voli(以下、turuさん)にお願いしました。これは僕がturuさんにお願いしに行く前に自分で考えていたデッサン。(そういえば曲順もその時点では違う)

 

もう購入してくれた人はわかると思いますが、イメージは崩さず、尚且つ↑よりお洒落なジャケットに仕上げてくれました。(ちなみに↑のデッサンは見せておらず口頭でお伝えしただけです。と言うのもデッサンを見てもらってしまったらイメージが固定されてしまうと思ったので。)

前作のジャケットも好評で僕自身とてもお気に入りでしたが、今回のジャケットもとても好きです。特に歌詞の背景は本当に素晴らしいです。是非購入して中を見て欲しい。

 

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つらつら、だらだらと書きましたが沢山の方のお世話になって出来たCDです。感謝がつきず、皆に足を向けて寝れません(つまりどこを向いて寝ればいいのか)。

方々でこの時代にCDを出す意味がわからない、薄れてきていると言いますし、それもまぁわからないでもないですが僕はCDが好きです。そして個人的にCDでやりたい事がまだまだあるのでそれらをやるまではCDなりレコードなりでリリースしていきたいと思っています。配信だけで良い場合も出てくるかもしれませんが、それはそれで選択肢が沢山あって良い時代だなと思います。

 

そんなCDを隅々まで味わって欲しいと思い、初めてライナーノーツを書いて見ましたがもう忘れている事も多々あるので、次回はその時その時記録をしていけるようにこのブログを継続していけたらと思っています。

 

おそらく次ブログを書くのは先日5月20日に行なわれたNostalgic Future release partyの事。それを書いたら、次はリリースツアーの記録に移ろうかと思います。少しでも黒川翔太の音楽を、Nostalgic Futureを味わうガイドになればと思います。

 

タイトルについて

あまり考えずに直感で出てきた言葉ですが、造語です。一応ググって見たところ同じタイトルの曲が一曲、あと台湾にある雑貨屋?が出てきましたがそれらとはなんの関係もありません。直訳すると”懐かしい未来”。このアルバムの曲の並びを時系列で説明しましたが、ブラックで始まり、リピートで終わりまた始まって行くという繰り返しつつも無常な日常、どこかで繋がっている過去と未来、”Nostalgic Future”という言葉の持っている始まりも終わりも"ある"けど”無い”ような、メビウスの輪のような響きが内容とリンクして気に入ったのでつけました。

 

これからについて

ザックリとですがやりたい事が沢山あったり、作りかけの曲が数曲あったりして、もう次のアルバムに着手しています。本格的にレコーディングが始まるのは曲(とお金)が揃ってからなのでまだ未定ですが、順調にこのアルバムが売れて、早く着手出来るよう祈ります。

あとこの「Nostalgic Future」に関しては後付けですが映像を自分で作れないかと模索中です。自分でやるのでそんな大それたものは作れないと思いますが、youtubeなんかで公開出来たらいいな〜と思っています。Soundcloudなどでも視聴出来るようにするかも検討中です。しかし、まずはこのブログを続ける事、そしてこの「Nostalgic Future」を一枚でも多く手渡せるようにリリースツアー頑張って行きたいと思います。

 

黒川